初めての旅/本多勝一
 朝日新聞記者になり、まず、「きたぐにの動物たち」、「カナダ・エスキモー」、「極限の民族」といった、どちらかというと自然やそこに住む人々のルポルタージュが多かったのですが、何といっても本多氏を有名にしたのはベトナム戦争下でのルポ「戦場の村」でしょう。

 アメリカによる北爆下での北ベトナム取材など、息をのむシーンの連続です。そのあとに続く「殺される側の論理」、「中国の旅」などを含めて社会的なルポルタージュが多くなります。

 しかしそれに平行して「日本語の作文技術」といった著作もあり、ジャーナリズム論についても多く書いています。

 この「初めての旅」は氏が18才のとき1951年に友人と2人で一ヶ月間の北海道放浪の旅の記録です。1人3,000円の旅費ということで「全行程がゴロ寝の野宿」の旅でした。これがとても痛快でぐいぐいと引き込まれてしまいます。巻末の解説で同じく朝日新聞の記者だった森本哲郎氏が「これが20歳前の青年の文章かと驚嘆させられる・・・」と記しています。

 本多氏が書き癖がついたというのは、登山などから帰って父親が根ほり葉ほり聞くので、話し下手だった氏が文章に書いて渡すという習慣だったからとのことです。

 本多氏は1933年生まれということなので、もう70才近い年齢になるのですねえ・・・・。