川柳でんでん太鼓/田辺聖子
もう、10年近く前になりますが、出張帰りの飛行機の中で週刊誌を読んでいると、「飲むほどに一人で会社をしょって立ち」という川柳を見つけました。

私自身、調子にのると、自分の意見を通そうと同僚や上司にかみつくといった横柄な態度をとったり、特に酒の出る席では気が大きくなり何にでも批判的になる、といったちょっと調子に乗った時期でもありました。(今でもそうだけど・・)

自分のことを詠まれているようなはずかしい思いをしたものの、17語でうまいこと表現するなあ、ユーモアがあるなあ、とポンと膝をたたきました。

川柳というのは新聞紙上などで目にしたことはあるものの、たいして気にしてはいませんでしたので、帰宅してから、本屋さんへ行き、特に時事川柳が載っている本を捜し始めました。

当時、川柳についての本は少なく、その中で見つけたのがこの本です。ここには田辺さんの軽快なエッセイと共に恋愛・食べ物・人情もの・反戦反逆など、現代川柳が紹介されています。たとえば・・・

 女の子タオルを絞るやうに拗ね    (川上三太郎)

 俺に似よ俺に似るなと子を思ひ    (麻布路郎)

 人妻となって卑怯な眼をつかい    (麻生路郎)

 万歳とあげていつた手を大陸へおいて来た (鶴彬)

川柳の本質は「滑稽、かるみ、うがち」といわれるそうですが、批判性や第三者的な中にも人や世の中をみる暖かみが感じられます。

今でも私にとって川柳的ユーモアが必要なのですが、気負いすぎるときには一呼吸おいてと自分に言い聞かせております。・・・しかし、なかなかねえ・・・