ワインの科学/清水 健一
 ワインを語る本は、いろいろ出回っていますが、学者さんといっても現場を知らない方の著作が多いので、話題が古かったり、又聞きでの話が多いようです。特に外国かぶれの著者に、そういう本が多いかも。でも、ホンモノのソムリエさんやワインアドバイザー、または、酒の小売りやさんなど、最近は増えていますし、読んでいて楽しいエッセイなんか多くなってきましたね。

 毎年、ブドウ・ワイン学会という学術団体主催の大会が行われます。2000年は11月に千葉大で行われましたが、もう、10年ほど前になるでしょうか。山梨県の甲府で大会が行われました。清水氏の発表なのに、氏はいません。すると、1〜2分ほど遅れて、後ろのドアから、氏が駆け込んできました。それも、黒の革ジャン姿で。夕べ遅くまでドラムをたたいていて遅れてすみません、という前置きで発表が始まりました。学会の発表を革ジャンで行う、というのもすごいことなのですが、ワイン製造中の微生物の研究についての話でした。これが、すごいのなんの。まあ、私は、微生物はシロートなんですが、一緒に行った同僚は、「スラーっと話しているけど、これだけの実験をするのにはすごく時間と苦労をかけているはず・・」と言ってました。12分ほどの発表なんですが、その内容の濃さは、わかります。

 この本は、ちょこっと専門的な文章も出てきますが、とても親切でわかりやすく書かれています。特に「ワインの熟成」や「ワインと健康の科学」なんかおもしろいですよ。

 特に、「亜硫酸無添加ワイン」についての見解は私も同意見です。でも、このことについては、もう少しつっこんで書いて欲しかったなあ。